# 信用創造ダイナミクス v3 分析レポート ## v3の変更点おさらい - **stress基底**:ΔC/C(信用収縮)→ **ΔE/E(株式的富収縮)** - **消費側損耗 LOSS_C** を追加:δ_C · (1−s) · Y(消費フロー比例) - 所得式:Y = C_flow / (1 + s + δ_C·(1−s)) --- ## 発見A:v2 vs v3 — 株式的富ベースのstressはより「厳格」 | 条件 | v2最終Y | v3最終Y | 差(v3/v2) | |---|---|---|---| | r=0.05 κ=3.0 | 44,404 | 33,293 | −25% | | r=0.10 κ=3.0 | 1,034 | 772 | −25% | | r=0.12 κ=3.0 | 325 | 241 | −26% | v3は一貫してv2より約25%低い均衡水準に落ち着く。これは消費側損耗δ_Cによる恒常的な所得圧縮の効果。崩壊の「有無」は変わらないが、**平常時の経済規模が常に小さくなる**。 → **消費側損耗は景気循環の振幅を抑えながら、水準全体を押し下げる。** --- ## 発見B:自己強化ループの実際の動き 金利ショック(t=60)直後の観察: ``` t=59(ショック前) E=1,319 K=124 δ_K=4.00% stress=0 t=60(ショック直後) E=727 K=125 δ_K=11.18% stress=0.449 ← 一気にδ_K増大 t=61 E=516 K=125 δ_K=8.64% stress=0.290 ← Eがさらに下落 t=62 E=578 K=125 δ_K=4.00% stress=0 ← 一時安定 ``` 注目すべき点:**Eは1期で1,319→727→516と連続下落し、δ_Kは11%まで跳ね上がる**。ただしKはほぼ変化していない(K≈125)。 これは「Eの収縮がδ_Kを増幅させるが、Kの物理的減少はタイムラグを持つ」という構造を示している。株式市場の暴落が即座に起き、実物の設備廃棄・倒産がその後に続く現実の危機パターンと一致する。 --- ## 発見C:消費側損耗δ_Cの二面性 | δ_C | 安定時Y | 崩壊後最小Y | LOSS_C/Y比 | |---|---|---|---| | 0.00 | 20,771 | 4.52 | 0% | | 0.05 | 15,925 | 3.92 | 0.04% | | 0.10 | 12,401 | 3.44 | 0.08% | | 0.20 | 7,838 | 2.69 | 0.16% | **δ_Cが大きいほど安定時Yが低下するが、崩壊後最小Yも低下する。** 「自動安定化装置」として期待されたが、実際には崩壊の深さも比例して浅くなっているものの、安定時水準の損失が大きい。トレードオフの構造: - δ_C↑ → 平常時の所得が恒常的に低下(コスト) - δ_C↑ → 崩壊時の下落幅がわずかに縮小(便益) **便益よりコストが大きい。消費側損耗は「自動安定化」というより「恒常的な経済圧縮」として働く。** --- ## 発見D:金利 vs 準備率(v3版) — v2の結論を再確認・強化 | 手段 | 最終Y | 最終Φ | ピーク損耗K | |---|---|---|---| | 介入なし | 96,094 | 11.5% | 1,716 | | 金利→0.09 | 5,386 | 37.7% | 170 | | **金利→0.11** | **7(崩壊)** | **1130%** | 34 | | 準備率ρ=0.30 | 11,037 | 14.7% | 253 | | 準備率ρ=0.40 | 3,610 | 17.0% | 97 | v3でも**準備率引上げは分配集中度Φを低く抑えたまま信用を抑制できる**という結論が再確認された。 特筆すべきは株式的富Eの挙動: - 準備率ρ=0.40で最終Y≈3,610のとき E=29,844 - 金利→0.09で最終Y≈5,386のとき E=32,430(YはむしろEより高いが不安定) **準備率抑制は株式的富Eを維持しながら信用を絞れる。金利引上げはEを直撃して自己強化崩壊ループを起動する危険がある。** --- ## 発見E:v3でのκ効果 — v2と根本的に異なる結果 v2ではκを1.0から5.0まで変えても最終Kがほぼ同じだった(stressがほとんど発動しなかった)。v3では: | κ | δ_Kピーク | 最終K | 最終Y | |---|---|---|---| | 1.0 | 6.0% | 248 | 5.88 | | 4.0 | 12.1% | 242 | 5.72 | | 8.0 | 20.2% | 233 | 5.39 | **κが効くようになった。** ただし効果は想定より小さい。これはE収縮が一時的(1〜2期)で収束するためで、ループが長期持続せずδ_Kが基礎値δ₀に戻るからだ。 → **κの効果を最大化するには、Eの下落が継続するような条件(高金利持続・在庫の慢性的劣化)が必要。** --- ## 発見F:臨界金利(v3版) — v2と同じ位置に崩壊閾値 | 引上げ後金利 | 落下率 | 判定 | |---|---|---| | r=0.10 | −39% | 調整 | | **r=0.11** | **−98.5%** | **崩壊(臨界)** | | r=0.12〜 | −98.6%以上 | 崩壊 | v2と同じくr=0.10〜0.11の間に急峻な臨界点が存在する。**stressの基底をE収縮に変えても臨界金利の位置は変わらない。** これはΦの閾値θ(=0.25)と μ(=0.60)によって決まる「タンス預金化の爆発」が崩壊の主因であり、どちらのモデルでも同じ構造を持つことを示している。 --- ## 総合:v2からv3への理論的深化 | 観点 | v2 | v3 | |---|---|---| | 崩壊トリガー | 信用収縮(金融的) | 株式的富収縮(期待的) | | κの効果 | ほぼ無効 | 有効(ただし小) | | 消費側損耗 | なし | あり(恒常的圧縮) | | 崩壊タイミング | 金融崩壊と実物崩壊が同時 | 金融(E)が先行、実物(K)が遅行 | | 臨界金利 | r≈0.11 | r≈0.11(変わらず) | **最も重要な新発見は「Eの下落がKの下落に先行する」という二段階の時間差構造。** これは株式市場の暴落が実体経済の悪化に先行するという現実観察と整合し、v3のほうが現実の危機過程をより忠実に表現している。